米粉の話
米の粉のお話
世界で一般的に粉食といえば小麦を指します。小麦は固い芯があり、粒食に向かないため、粉にせざるを得ないからです。
ちなみに小麦は弥生時代中期に渡来し、九州地方ではイネより多く作られていた可能性もあります。
同時に臼も既に完成した形で西方から日本に伝来しました。
さて、米は脱穀しさえすれば、煮ても蒸してもそのまま食べられる、すばらしい穀物といえます。
一方、米を粉にするにはそれなりの手間がかかります。
しかも粉にしても保存が特に効くわけでも、すぐに食べられるようになるというわけでもありません(その点では干し飯のほうが優れているといえます)。
米をわざわざ粉にするというのは、どういった意味を持つのでしょうか。
米を粉にするのはいつから始まったのか、実ははっきりしたことはわかっていません。
しかし、縄文時代は粉食文化でした。ほとんどの食べ物を石皿とたたき石ですりつぶして食べていたと考えられています。
小さな魚や小動物を骨ごと叩けばハンバーグになります。
アクの強い木の実を水さらしにしてアクを抜いて柔らかくしてから粉にし、血や水をつなぎにしてクッキーにするということも行われていました。
クッキーやパンの炭化した遺物が見つかっています。また民俗調査から、豆腐状のものを作っていたとも考えられています。
このような背景から、同様に米を粉にしてこねるということがされていても何ら不思議はありません。
生の米を水につけ、搗いて粉にするというのは、現代にも通じます。
米は硬い穀物なので柔らかくする一手間が不可欠です。
水分があるときはどろどろとしていますが、水気を切って搗くと餅のようになり、成形が自在となります。
これは有史時代以降「シトギ(粢)」と呼ばれ神に供えられたことがわかっていますが、有史以前・・・
もっといえば石臼やジャポニカ種が渡来する以前の時代にもこの習慣があったとしても、
粉食文化の縄文時代を考えてみると不思議はないといえます(あくまで推測ですが)。
同時代からは漆彩色されたり磨きこまれたりと丹念に作られた、祭祀用ミニチュア土器のセットが出土しており、盛り付け方なども整えられていたと考えられています。
時代が進み、大陸から碾き臼が伝来すると、米も臼で挽いたことでしょう。税制が敷かれると米の選別は必然となります。
小米(脱穀などの際に割れた米)やしいな(実りの悪いやせた米)を積極的に粉にするようになります。
分業がされてくると、農村ではくず米を水車小屋などの挽屋へ持って行き、粉にしてもらって使うようになります。
こうして、神饌でありながらも、くず米の処理にも使え、庶民の身近なおやつでもあるという、
一見矛盾したような性格を持つ米粉が現在にも続いてきたのではないでしょうか。
和菓子のお話
7世紀頃から菓子を作ることが始まりました。
菓子とはもともと果物や木の実のことでしたが、穀物をひいて粉にし、成形して菓子を作ることが始まったのです。
さらに奈良・平安時代には中国から、飯を潰し固めた餅(もちいひ)や、米粉を固めて蒸したり茹でたりしたもの、
そして唐果物(からくだもの)と呼ばれる粉食菓子の製法が伝わりました。
唐果物には、小麦粉を練って炒ったものや、おこし、現在のうどんのルーツとなったものがありました。
平安時代の『和名抄』には、米粉で作る粽、草餅、「ぶと(後に柏餅に発展)」などが登場します。
「ぶと」は米粉を水でこねて蒸し、搗いて成形し、ごま油で揚げたもので、現在も奈良の春日大社の毎月三回の行事に供えられるといいます。
また、同じく平安時代の『延喜式』には、粉熟(ふずく)と呼ばれるものの作り方が書かれています。
米の粉をこね、蒸し、羊羹のように切った、きめの細かいしんこ餅で、当時はデザートやおやつといった扱いだったようです。
団子そのものは縄文時代から存在しました。前述のように、縄文時代は粉食文化だったからです。
ところで、『倭名類聚抄』に「団喜(だんき)」と呼ばれる、丸い餡を小麦粉の皮で包んだものが登場します。
これがなまって「団子」という言葉が出来た、あるいは中国語の「団子」(餡入り団子のこと)と間違って定着したという説があります。
富裕層の菓子と庶民層の餅は、互いに進化を遂げながら、茶道が整った安土桃山時代、町人文化が花開いた江戸時代を経て交じり合い、今のような形になったと思われます。
米のおいしさを粉に活かすには
お米のおいしさは、粘りと旨味。 さらに、粉にしたときには、その粉をお客様がどう使ってくださるかをイメージすることが重要だと弊社は考えています。 弊社は先人の知恵を知り、考えながら粉を作ることを大切にしています。
※弊社の推測を含めた見解ですので、その点をご承知おきくださいますようお願い申し上げます
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